お侍様 小劇場 extra

    “春の足音?” 〜寵猫抄より
 


冬場の窓辺といえば、
外気とそれから キンキンに冷やされたガラスのそれか、
じんわり届く冷気で寒かったものが。
このところはそれを気にしないでいいくらい、
フローリングに出来る陽だまりが暖かい。

 「にゃvv」
 「にゃーにゃ♪」

明るくなるのも陽が昇るのも、これでも早くなった方なれど。
規則正しい毎日って何ぁに?という身の、
気ままな仔猫たちにはそんなの判らぬ。
ただ、お庭の背の高いほうの木々の、
梢の上という高みにお日様が顔を出すのが、
一頃よりもずんと早まっているものだから。
島田さんチのおちびさんたちも、
その目映さと陽だまりの明るさに惹かれ。
今はコタツに押されて壁際に寄せられたソファーの上、
フェイクファーやウサギの毛というもふもふの素材で作られた寝床から
それぞれお元気に飛び降りると
小さな肢体をそれでも軽やかに跳ねさせて、
ちょこちょこりと駆けて駆けて。
辿り着いたは、濃色の床を際立って明るく照らす陽の領域。
頭を突っ込むと眩しい朝日が襲うのへ、
不意打ちなのがビックリするものか
びくくっと震えて飛び出しては、総身を低く身構えて。
今度は用心深くなり、
小さなお鼻を“ひくひく・くんすん”と寄せながら、
何だこれ、何だろこれと、
大人の手のひらに隠せるほどの小さな身を寄せ合ったり、
そうかと思や 押しのけ合ったり。(笑)

 「……七郎次、腹でも差し込んだか?」

さすがは時代物をお書きのせんせえ、
腹痛の古いお言いようも御存知ならしく。
リビングへの刳り貫き戸口の縁に身を伏せたそのまま、
へなへなとしゃがみ込んだ…のが窺えるような、
あるいは、自宅だというに何へ警戒しておるのか、とも
解釈出来そな態勢にある敏腕秘書殿へ。
何かしらうすうすと察していながらも、そんな訊き方をしてみれば、

 「勘兵衛様、声が大きい。」

どこの忍者軍団の、しかも幹部かというよな、
それは冴えた眼差しをした、真摯なお顔を振り向けて来るものだから。

 “……お。”

一瞬キョトンとしてから、
はあ そうですかとお髭のせんせえも同じようにしゃがみ込む。
こちらも武道の心得がある身なせいか、
結構な存在感のある充実した肢体を
されど静かにさばいたその身動きは素晴らしく。
寒さ避けにと羽織ったライトダウンのベストすら
わさこそとうるさく鳴りもせずであり。
そんな御主の視線が、
すぐ傍で同じ高さになったのを待ってたらしく、

 「ほら、見てくださいな。」

ほらほらと打って変わって嬉しそうなお顔をちらり見せ。
だが、今は観察のほうが優先か、
すぐさま視線をリビング奥の窓辺へ戻してしまう熱中ぶりよ。

 「ここ何日か、
  お腹が空いたとキッチン前まで呼びに来なくなったと思ったら、
  あんなして陽だまりで遊んでたらしいんですよね。」

輪の中へ入れば きらきらと眩しい、
陽の水たまりが不意に出来たのが不思議ならしく。
もう少し経ってしまえば部屋全体の明るさに馴染んでしまうし、
起き出して来た七郎次や勘兵衛から
どらどらと構われることもあって もう忘れるものが、

 「みゃう?」
 「にゃにゃっ。」

小首を傾げたり、恐る恐るに踏み込んで、
だがだが、
スポットライトのような威勢のいい朝日に照らされるのへ、
やはりビックリしてしまうようで。
あわあわとの大慌て、
裸足のあんよを板張りのなめらかさに取られてしまい、
およおよと すべらせながらも懸命に逃げ惑うのが、
可愛らしいやら愛惜しいやら、可笑しいやら。

 「可愛いですよねぇvv
  あ、一丁前だと思いませんか、今の格好。」

一応はメインクーンという
キャラメル色の綿毛をまとった仔猫のほうは、
だがだが 彼らには小さな坊やの姿にも見えるので。
陽だまりから
火傷でもしそうになったかのように大慌てで逃げ出したそのまま、
今度は何事かを考え込むよに
金の髪を陽だまりから受ける余光に淡くけぶらせながらも、
愛らしいお顔を小難しそうにしかめつつ、
床へ肘をつき
小さなお手々で両手がかりでの頬杖なんかして見せる坊やなのへと。
こちらも随分と可愛らしい素振りのまま
やぁんvvと やに下がる恋女房殿の可愛げが、

 「……うむ。」

勘兵衛せんせえのほうにしてみりゃ、
何とも可愛らしいやら愛しいやらで。
ほらほらと、見てくださいよぉと示されるほうよりも、
そりゃあ可愛らしくはしゃぐ、
美丈夫さんのほうにばかり視線が釘付けなままの、
勘兵衛様だったそうでございます。

 《 そろそろ呼んでくださいませ。
   でないと、お二人とも風邪引いてしまいますよ。》

 “う、うむ、あい判った。”

クロちゃんたら大人ぁvv(笑)






   〜Fine〜  15.02.21.



  *猫の日といえばで
   書くと思ったでしょ?のキュウ猫のお話ですvv
   七郎次さんの槍さばきを
   最近書いてないのに気がつかなんだのと同様で、
   大妖退治するこちらの久蔵さんを 以下同文なのもまた、
   女子高生話でさんざん暴れ回らせてるかららしいです。
   ……変なサイトだ、つくづくと。(こらこら)

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